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米価格が1年で2倍に!「令和の米騒動」で見えた日本農業の構造的課題

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こんにちは!株式会社ドゥアイの土居です。

先日、いつものようにスーパーに買い物に行ったんですが、米売り場で思わず二度見してしまいました。5キロ袋のお米が4,000円超え。「えっ、これ間違いちゃうん?」と思わず関西弁が出てしまったんですよね。

でも、これが今の日本の現実なんです。いわゆる「令和の米騒動」と呼ばれる事態が、私たちの食卓を直撃しています。

衝撃の価格高騰 – 1年で2倍になった米価格

まず、現状がどれほど深刻かを数字で見てみましょう。

2025年6月時点で、5キロ袋のお米の平均価格は4,223円となっています[1]。これ、1年前の約2,130円と比べると、ほぼ倍の水準なんです。つまり、たった1年で米価格が2倍になったということです。

「そんなバカな」と思われるかもしれませんが、これは紛れもない事実です。私も最初は信じられませんでした。でも、実際にスーパーに行ってみると、本当にこの価格なんですよね。

さらに驚くべきは、この価格高騰が全国規模で起きているということです。地域によって多少の差はあるものの、どこに行っても米が高い。これまで「お米は安い」というのが日本の常識だったわけですが、その常識が完全に覆されてしまったんです。

ただし、最近になって少し変化の兆しも見えてきています。5月最終週には、スーパーの店頭平均価格が前の週から37円値下がりしました[1]。農水省のデータによると、価格が2週連続で下落したのは昨年11月以来初めてのことです。

とはいえ、37円下がったところで、まだまだ高水準であることに変わりはありません。この価格高騰が私たちの家計に与える影響は計り知れないものがあります。

「令和の米騒動」の真の原因を探る

では、なぜこんなことになってしまったのでしょうか。表面的には「需要と供給のバランスが崩れた」ということになるんですが、その背景にはいくつもの複合的な要因があります。

2023年の記録的な猛暑が引き金に

まず最大の要因として挙げられるのが、2023年の異常気象です。記録的な猛暑の影響により、2023年産米の1等米比率は過去10年余りで最も低い水準となりました[1]。

これ、農業に携わっている方なら分かると思うんですが、米の品質が下がるということは、単純に収穫量が減るだけじゃないんです。品質の低下により、精米時に必要となる需要が拡大するという問題もあります。つまり、同じ量のお米を食べるのに、より多くの原料米が必要になってしまうんですね。

実際、令和5年産の需要量は、当初の680万トン程度という推計に対して、最終的には705万トンにまで拡大しています[2]。これは品質低下による影響が大きいと言われています。

コロナ明けの需要回復が追い打ち

次に大きな要因となったのが、新型コロナウイルス対策の緩和による需要の急回復です。外国人観光客が増加し、外食産業の需要も回復したことで、供給逼迫に拍車がかかりました[1]。

これまで家庭での米消費が中心だった状況から、一気に外食や観光業での需要が戻ってきたわけです。でも、供給側の準備が追いついていなかった。まあ、これは仕方ない面もあるんですが、需給バランスを一気に崩す要因になったのは間違いありません。

南海トラフ地震の臨時情報が消費者心理に影響

さらに、2024年8月に政府が南海トラフ地震発生の可能性に関する臨時情報を発表したことも、意外な影響を与えました[1]。これを受けて、消費者の間でお米の買いだめが広がったんです。

実際には地震は発生しなかったものの、この買いだめ行動が市場の需給バランスをさらに悪化させる結果となりました。人間の心理として、「もしもの時のために」と考えるのは自然なことですが、それが全国規模で起きると、こういう事態になってしまうんですね。

構造的な問題:農業人口の高齢化と作付面積の減少

しかし、これらの直接的な要因の背景には、もっと深刻な構造的問題があります。それが農業人口の高齢化と作付面積の減少です。

農家の担い手不足により米作りが縮小し、安定供給が難しくなっているのが現実です。これは一朝一夕に解決できる問題ではありません。長年にわたって積み重なってきた課題が、今回の異常気象をきっかけに一気に表面化したというのが正しい見方だと思います。

需給ギャップの実態

三菱総合研究所の分析によると、令和4年から6年産の3年通算で約60万トンの供給不足が生じています[2]。これは相当な規模です。日本の年間米消費量が約700万トンですから、その約8.5%に相当する量が不足しているということになります。

この数字を見ると、今回の価格高騰がいかに深刻な需給バランスの崩れによるものかが分かります。単なる一時的な現象ではなく、構造的な供給不足が起きているんです。

政府の備蓄米放出 – その効果と限界

こうした深刻な状況を受けて、政府も対策に乗り出しました。その目玉が備蓄米の放出です。でも、この対策、実は思ったほど効果が上がっていないのが現実なんです。

段階的な備蓄米放出の経緯

まず、江藤前農水大臣時代の2025年4月までに、合計31万トンの備蓄米放出が決まりました[2]。しかし、これでは需給ギャップの半分しか埋まらない状況でした。

そこで小泉農水大臣による追加30万トンの放出が決定され、合計61万トンの備蓄米が市場に供給されることになりました[2]。これで3年分の需給ギャップがようやく埋まったことになります。

数字だけ見ると「これで解決やん」と思うかもしれませんが、実際はそう簡単な話ではありませんでした。

随意契約の課題と現実

政府は備蓄米の放出方法として、従来の競争入札から随意契約に切り替えました。これにより、スーパーなどに直接売り渡すことで、より迅速に消費者の手に届けようとしたんです[3]。

実際、埼玉県秩父市のコメ屋では、6月23日に令和3年産の青森県産「まっしぐら」20トンが入荷し、5キロ税込み1,900円で販売を開始しました[3]。これは確かに市場価格より安く、消費者にとってはありがたい話です。

しかし、ここで大きな問題が浮上しました。随意契約による備蓄米の販売量は、6月22日時点で18,391トンにとどまっているんです[3]。これは申し込みが確定した29万トン余りに対して、わずか1割未満の水準です。

地域格差の深刻な問題

さらに深刻なのが地域格差です。都道府県別の販売状況を見ると、その差は歴然としています[3]。

販売量が多い地域:

  • 東京都:1,700トン
  • 大阪府:1,563トン
  • 埼玉県:1,242トン
  • 兵庫県:1,207トン

販売量が少ない地域(50トン未満):

  • 秋田県:9トン
  • 岩手県:12トン
  • 青森県:15トン
  • 沖縄県:21トン

この格差、よく考えてみると不思議な現象です。秋田県や岩手県といった米どころで販売量が少ないのは、地元の銘柄米が安く出回っているからという面もあるでしょう。でも、それにしても差が大きすぎます。

流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は、「備蓄米の保管場所から遠い西日本を中心に流通に時間がかかっている」と指摘しています[3]。つまり、物流の問題が大きく影響しているということです。

8月末売り切り条件の現実性

政府は随意契約の備蓄米について、8月末までに売り切ることを条件としています[3]。しかし、現在の販売ペースを考えると、この条件をクリアするのは相当厳しいというのが専門家の見方です。

折笠研究員は「8月末までに全て売り切るのはかなり難しい可能性が高い」と指摘し、「国が備蓄米の買い戻しをするか、8月末まで売れなくても引き続き売っていいという許可を出すか、その判断が問われることになる」と述べています[3]。

まあ、これは予想できた話でもあります。いくら政府が「放出する」と言っても、実際に消費者の手に届くまでには時間がかかる。精米、袋詰め、流通、販売と、いくつものステップを経る必要があるわけですから。

価格見通しに変化の兆し

ただし、備蓄米放出の効果が全くないわけではありません。2025年7月4日に発表された調査結果によると、向こう3か月のコメ価格の見通しを示す指数は35と、24ポイント低下しました[3]。これは調査開始以来最大の下げ幅です。

業界の間では、随意契約による割安な備蓄米の放出で価格が下がるという見方が強まっています。実際、スーパーでの価格も6月29日までの1週間で5キロあたり3,691円と、前週より57円値下がりしています[3]。

でも、これで安心するのは早計だと思います。根本的な需給バランスの改善には、まだ時間がかかりそうです。

国際的な注目を集める日本の米不足

この「令和の米騒動」は、国内だけでなく国際的にも注目を集めています。特に印象的だったのが、トランプ米大統領の発言です。

トランプ大統領の日本批判

2025年6月30日、トランプ大統領はSNSで「日本は私たちの米を受け取ろうとしない。深刻な米不足に直面しているというのに」と投稿しました[4]。日本による米国産米の輸入が少ないことへの不満を示したものです。

この発言、正直言って複雑な気持ちになりました。確かに日本は米不足に陥っているわけですが、だからといって簡単に米国産米を受け入れればいいという話でもありません。

日本の米市場は長年にわたって保護されてきた経緯があります。それは単に農家を守るためだけではなく、食料安全保障の観点からも重要な政策だったわけです。でも、こうした緊急事態になると、その政策の是非が問われることになります。

台湾米の輸出急増

一方で、台湾からの米輸出が急増しているという報道もありました[5]。台湾当局は「この機会に品質の高さを知ってもらいたい」としており、日本の米不足を商機と捉えている様子が伺えます。

これは興味深い現象です。日本が米不足に陥ったことで、これまであまり注目されていなかった台湾米にスポットライトが当たっている。グローバル化の時代において、食料供給のあり方を考え直すきっかけになるかもしれません。

食料安全保障の課題

今回の米不足問題は、日本の食料安全保障について重要な問題提起をしています。これまで「米だけは自給できている」というのが日本の誇りでもあったわけですが、その前提が揺らいでいるんです。

気候変動による異常気象は今後も続くでしょうし、農業人口の減少も止まりそうにありません。そうした中で、どうやって安定的な食料供給を確保していくのか。これは政府だけでなく、私たち国民全体で考えなければならない課題です。

今後の見通しと私たちができること

では、今後の見通しはどうなのでしょうか。そして、私たち消費者にできることはあるのでしょうか。

令和7年産への期待と不安

2025年の新米(令和7年産)については、一定の期待が持てる状況です。主食用米の作付面積は対前年比7.5万ha増の133.4万ha、生産量では対前年比40万トン増の719万トンと推計されています[2]。

ただし、この719万トンの中には備蓄米20万トンも含まれているため、実質的な生産量は約700万トンとみる必要があります[2]。これで本当に十分なのかどうか、正直なところ不安も残ります。

令和8年産の準備が最重要課題

三菱総合研究所の分析では、今最も重要なのは「令和8年産の準備に早急に取り掛かること」だとしています[2]。2024年8月からコメの価格が上昇し始めましたが、本格的な価格上昇は秋以降でした。そのタイミングでの準備では翌年の作付けには間に合わず、令和7年産において多くの地域で思ったほどの増産ができなかったからです。

現在、備蓄米が60万トンも不足している状況です[2]。この分を取り戻すためには、令和8年産での大幅な増産が不可欠です。でも、それには今から準備を始める必要があります。

構造的な問題解決の必要性

しかし、根本的な解決のためには、もっと大きな視点での取り組みが必要です。農業人口の減少、高齢化、作付面積の減少といった構造的な問題に正面から取り組まなければ、同じような問題が繰り返し起きる可能性があります。

これは簡単な話ではありません。農業の魅力を高め、若い人たちが農業に参入しやすい環境を作る。技術革新によって生産性を向上させる。気候変動に対応できる品種の開発を進める。やるべきことは山積みです。

私たち消費者にできること

では、私たち消費者にできることはあるのでしょうか。

まず大切なのは、パニック買いをしないことです。今回の問題を悪化させた要因の一つが、消費者の買いだめ行動でした。冷静に必要な分だけを購入することが、市場の安定につながります。

また、国産米を支持し続けることも重要です。価格が高くなったからといって安易に輸入米に頼るのではなく、可能な範囲で国産米を選ぶ。それが日本の農業を支えることにつながります。

さらに、食べ残しを減らすことも大切です。せっかく高いお金を払って買ったお米を無駄にしてしまっては意味がありません。一粒一粒を大切にする気持ちが、今こそ求められています。

まとめ

今回の「令和の米騒動」は、私たちに多くのことを教えてくれました。食料の安定供給がいかに大切か、そしてそれがいかに脆いものかということです。

価格が2倍になったことで家計への負担は確実に増えています。でも、この機会に日本の農業や食料安全保障について真剣に考えてみることも大切だと思います。

政府の対策も一定の効果は見せていますが、根本的な解決にはまだ時間がかかりそうです。私たち一人一人ができることは小さいかもしれませんが、それでも意味のあることだと信じています。

まあ、とりあえず今日の夕飯のお米は、いつもより少し丁寧に炊いてみようかなと思います。一粒一粒に感謝の気持ちを込めて。


参考文献

[1] Bloomberg「日本を揺るがす『令和の米騒動』、その背景と政府対応-QuickTake」(2025年6月14日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-14/SXQG28T0G1KW00

[2] 三菱総合研究所「『令和のコメ騒動』(6)備蓄米放出後の最重要課題」(2025年6月6日)
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20250606.html

[3] NHK「コメ価格の見通し指数 下げ幅最大 備蓄米放出が影響か」(2025年7月4日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250704/k10014853711000.html

[4] 朝日新聞「トランプ氏『日本は米不足なのに米国産受け取らず』相次ぐ日本批判」(2025年7月1日)
https://www.asahi.com/articles/AST6Z6X7ZT6ZUHBI004M.html

[5] YouTube「台湾米の日本への輸出急増『品質の高さ知ってほしい』」(2025年6月9日)
https://www.youtube.com/watch?v=EJuCvev7G68